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6/17(土)『SHOT!』 公開記念ゲスト・トークレポート

2017.6.17
ドレスコーズの志磨 遼平さんにご来場頂き、
SHOT! THE PSYCHO-SPIRITUAL MANTRA OF ROCKの日本プレミア公開初日スペシャルトークを開催しました!
トークの進行役は、ABCラジオ毎週火曜夜10時~深夜1時よなよな~なにわ筋カルチャーBOYZ~のパーソナリティーでもお馴染みの鈴木 淳史さんです。
関西弁が心地いい、約40分間にわたるトークショーとなりました。その時の雰囲気を残しつつ、トークショーの様子を記録しております。
上の写真は、当館屋上にて。東寺を背景にパシャり。

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鈴木どうもこんにちは。本日進行を務めさせて頂きますインタビュアーの鈴木です。今日が、映画『SHOT!』の日本初公開という事で、皆さんは今、映画を観終わられたばかりとなるのですが、志磨さんは、『SHOT!』をいつみられたのですか?


志磨
こんにちは。ドレスコーズの志磨です。僕も今日が初見でした。


鈴木
本日6/17(土)から、ホテルアンテルーム京都にて〈DAVID BOWIE by MICK ROCK〉という写真展を開催しているのですが、今回はその写真展の開催に合せて、京都にて『SHOT!』のプレミア公開が実現したわけですよね。映画の方は如何でした?


志磨
面白かったですよ!すごいですよね、この世代のロックの人は。破滅的というか…。(笑)


鈴木
思っていた以上に、ドラッグのことなんかも出てきますしね。改めてこの時代のロックンロールの背景に触れると。


志磨
自分の体を酷使していて、人体実験に近いというか。ミック・ロックはものすごいヨガとかも好きだし、ヒッピー世代というか、色々と興味がありすぎてああいう事にね…。(笑)


鈴木
色々とね…。決してよくはないんですけどね(笑)


志磨
ミックは、脳みその仕組みとか、精神の世界とかそういう事にも興味があるんでしょうね。西洋人なんやけど、禅とかヨガとか東洋思想にハマるっていうね。昔は、そういうのに加えてダメなお薬も試しつつ、創作的なところで、自分たちがどこまで行けるのか試してたっていう。自由勝手にめちゃくちゃやった結果、ミックの心臓がぶっ壊れてしまって、緊急手術を受けることになってしまったエピソードとか、すごいですよね。


鈴木
そう思うと、ミックさんって長生きですよね。

それで志磨さんは先日、ミック・ロック本人にお会いされたんですよね?


志磨
そうなんです、お会いしたんですよ。彼、めちゃくちゃ元気で。
〈DAVID BOWIE by MICK ROCK〉が東京で開催してた時に(※今年の2/25〜3/13まで原宿のVACANTにて開催)、その展覧会の最終日にミックが来て、彼と対談したんです。彼、ずーっと喋ってましたよ。ものすごい元気で。 (笑)


鈴木
噂によると、通訳の人が間に合わないくらいずーっと喋ってはったとか。(笑)


志磨
通訳の人が、もういい加減話すのやめてって止めてましたからね。(笑)

で、ミックが子供みたいにすごいふてくされて。


鈴木
もう70歳すぎてはるんですよね。


志磨
ね、元気。

鈴木ミックに会われてどうでした?
志磨さんが、10代の頃から憧れたロックスター達を撮っている、憧れのロックフォトグラファーですもんね。


志磨
今回こうやって映画になって初めて、ミックの経歴をまとめて見る事ができるんで分かりやすいんですけど。それまでは、「え、この写真もあの写真もミック・ロックなん!?」っていう感じで。大きい本屋さんでミックの写真集を見つけた時に、ああこの人が撮ってたんやって知って。俺この人に、だいたい育てられてるやん!って思った。


鈴木
それは何歳くらいですか?初ミック・ロック体験は。


志磨
最初、ミックの写真って知らずに見たものなんですけど。

『SHOT!』の劇中にも出てくる写真で、デヴィッド・ボウイがミック・ロンソンの股からニョキって出てる写真を見たのが初体験ですね。昔、《THE DIG》っていうムック本があって、その表紙になってたんやと思う。当時、「わあすごい!これがデヴィッド・ボウイか!ジギースターダストか!」と思って、その本買ったんです。その本の中に、グラムの名盤100選とか、こういう人が活躍したとか、グラムっていうのがどういうアティチュードやったかっていうのがまとめて書いてあって。それで、モット・ザ・フープルとか、T・レックスとか、『SHOT!』の中に出てくる人達のCDを買いだした。そしたら、そのジャケットがまたミックの写真で。多分、それが中学2年とか3年とかかな。


鈴木
今みたいにインターネットがないから、ほんまに掘っていく作業というかね。


志磨
そう。雑誌に写真載ってたとしても、めっちゃ小さい白黒のカットとかで、ちょっと印刷もつぶれてて、なんか妄想が膨らむじゃないですか。わあ、これは何なんやろうってね。今回の〈DAVID BOWIE by MICK ROCK〉のチラシに使われてるボウイの写真とかもね。ミックが撮った写真を見て、まあ当時はびっくりしてましたね。


鈴木
そういったミックの写真が、今ではTシャツとかトートバックになっててね。


志磨
そう、商魂たくましいというか。(笑)

ミックの、「お金について行けばいいねん」みたいな発言が映画の中にも出てきますよね。
あの感じがすごくいい。会った時ミックに「お前、売れろよ」って言われて。
その時、写真を撮ってもらったんですよミックに。
とりあえず、[Photo by ミック・ロック]って大きく書いて写真出せば、今より有名になれるから!って言われて。(笑)


鈴木
いいですね。自分の名前大きく出してくれっていうカメラマンもね、なかなかいないですよね。(笑)


志磨
で、「とにかくロックンロールやるんやったら、お金設けなあかんから。売れな意味無いやん?」って言われて。そんなにはっきり言われたら気持ちいいなと。


鈴木
確かに。日本であんまりそういう発言する人ってなかなかいないから。

「本当に好きな事をさせて頂いてます」的な謙虚な発言とか多いよね。この感じは西洋人特有というか。


志磨
〈70年代を撮った男〉っていうキャッチコピーも、最初は嬉しくなかったみたいで。映画の最後にYeah Yeah Yeahsとか流れてて、フレーミング・リップスとか、現在も写真を撮り続けてるのに、ボウイとかルー・リードとか当時の話ばっかりが取り上げられるなあ~って思ってたみたいです。でも、途中で開き直った時があったそうで、「まあ、でもこれで金になるんやったらええか」と思ったと。「だから、今は適当にやってま~す」みたいな事言ってました。ほんまにこんなイントネーションで。「お金になるし、いっかな~」みたいな言い方でしたよ。(笑)


鈴木
そんな感じなんですね。ミック・ロックって。(笑)


志磨
チャラかったですね。(笑)


鈴木
写真はどんな感じで撮られたんですか?

スタジオに入ってとかじゃなくて、対談の会場で撮った?


志磨
会場の待合室で撮って頂きましたね。最初は僕とミックの2ショットを、別のカメラマンさんに撮って頂いてたんですけど。その内、そのカメラマンさんのカメラをミックが取り上げて、そのままパシャパシャ撮られだした。「立て」とか「座れ」とか言われて、知らん間にミックに撮られてる!みたいな。


鈴木
心の準備が整ってない状況で撮られた?


志磨
必死でしたよ。とりあえずキメ顔するしかないですよね。(笑)

こんな所でアワアワしても仕方ないなと思ったんで、キメ顔しつつ、心の中では、えらい事になったなあ~と思って。
『SHOT!』のエンドロールで流れるシーンみたいに、めっちゃテンション高く撮ってくれて、「Wow!A – ha!A – ha!」って言いながら。その流れで「“mother fxxker!”って言え」って言われて…。(笑)


鈴木
カメラに向かって?(笑)


志磨
何回も「“mother fxxker!”って言え」って言われるから。

僕、生まれて初めて“mother fxxker!”って言葉を発声しましたよ…。
生まれて初めて「マ…マザー●ァッカー…」って。(笑)


鈴木
日本で生きてたら、なかなか言わないですよね。(笑)


志磨
そうですよ。僕育ち良いですから。(笑)

そんな汚い言葉ね。普段そんなん言わないのに、初めての“mother fxxker!”を、本場の方に言うなんて。(笑)


鈴木
ミック・ロックに向かって“mother fxxker!”は凄いですよね。(笑)

いつも、こういうスタイルで撮ってはるんですかね?


志磨
あ…。でも普段から少しお口が悪いというか。(笑)

それがまた、ミックらしくていいんですよ。周りのスタッフとかも、結構振り回すんですけど。スタッフに、「おいお前、珈琲に砂糖ガンガン入れたか?」とか「俺もう、砂糖しか…ほんまに砂糖だけやねん、甘えてるんは…。それ以外はヨガもするし、めっちゃストイックやねん。今日も寝てないしな」みたいな事言ったり。結構、寝てない自慢するんですよ。(笑)


鈴木
よくいる業界人的な。(笑)


志磨
「俺、ほんまに忙しいし。でも、三転倒立してるねん」みたいな。その日も三転倒立してはったみたいなんですよ。対談が始まる前に、「ちょっと今からトークの為に集中してくるわ」みたいな感じで、1時間くらい部屋入らはって。で、出てきたら「あ~すっきりしたわ。やってきたで、三転倒立。」みたいな事言ってて。(笑)

あれ、何の話でしたっけ…?(笑)


鈴木
お砂糖大好きの話?(笑)


志磨
ああ、そうそう。

「その珈琲に入れる砂糖だけがオレの心のよりどころやから、ある砂糖全部入れろ!」みたいな勢いで。


鈴木
そうか、それが昔はドラッグやったんか。(笑)


志磨
そうそう、今は健康的にね。砂糖に移行してはって。(笑)

写真の撮影でも、僕その後スケジュール入ってたんで、もう出ないといけない時間になってるんですけど、全然気にしてなくて。10~15分過ぎてるんですけど、「もう、うるさい。待たせといたらええねん。俺が遼平を撮ってるねんから!」みたいな感じでね。
ああ、これが70年代の人か…って思って。


鈴木
しかも志磨君は、“mother fxxker!”って言わされてて。(笑)


志磨
そう。僕も“mother fxxker!”言うてるもんやから、共犯というか。(笑)

鈴木志磨君って、撮影とか写真っていうものをすごく大事にしているロックミュージシャンやなあって僕は思っていて、そういうところがすごく好きなんですけど。今までも、大勢のカメラマンさんに撮影されてきたと思うけど、ミックの撮影は違った?


志磨
ミックが撮ってきた70年代って、いわゆるロックの黄金時代じゃないですか。その欲望の限りを尽くすいい時代を、堂々と自分のキャリアで生き抜いてきた人やから、自分にも自信があるし、そうやって「自由にやるのが、ロックなんじゃないの」っていう感じ。今言ったら笑われそうな事を、これだけ堂々とやってきた人で。まあ、やりすぎてミックはぶっ倒れてしまったんですけど。そういうのはすごい何て言うか…、言い方はちょっとあれですけど…、「間に合ったな」という感じ。僕らはまだ、60年代70年代のロックの黎明期というか…、チャック・ベリーってこないだまで生きてましたからね。ほんまに、パイオニアというか、聖徳太子的なというか…。ちょっと分からないですけど。


鈴木
ちょっと、歴史的な人物というか。


志磨
そう、ナポレオンとか。なんか、ロックンロールにおいての、そういうような人達に、ギリ間に合ったんだな、という風に感じた。間接、デヴィッド・ボウイな訳じゃないですか。彼らのライフスタイルみたいなのを、間接的に味わえたというか。


鈴木
デヴィッド・ボウイの撮影話とかも結構聞けました?


志磨
いっぱい聞けましたよ!でもまあ、「もう覚えてないわ」って言われる事もありましたけど。

『SHOT!』の中にも描かれるように、「当時のロンドンとニューヨークのロックンロールシーンは、とにかくすごい毎日やったんや」っていうお話はたくさん聞かせて頂きました。
ライブが終わった後も、僕たちやったら、「今日のあの曲のさあ…」とか反省会をするんですけど。当時のデヴィッド・ボウイとかって、そういうのあったんですか?って聞いたら、「あるわけないやん!」って。「ライブの後何してたんですかって…、言えるわけないやん!」って言われて。(笑)


鈴木
さすが、ロックですね。ちゃんと悪い…。(笑)


志磨
「ムチャクチャやで、俺らは!」って言われて。

僕も「へ~!そうですよね~!」て言うしか無くて。(笑)


鈴木
志磨君たちは、ちゃんと毎回…?


志磨
僕らはいつも居酒屋さんでね。「あそこ、明日はちょっと曲と曲の間短くしよか」とか喋ってるんですけど。ミックには「そんなん、やったこと無いわい」って言われました。(笑)


鈴木
すごいですよね。ほんまに破天荒な時代というか。

志磨くんがミックに撮ってもらった写真は、その後見られたんですか?


志磨
いくつか見せて頂きました。でも、それをポンッと外に出してしまったら、後で高額なギャラ言われても困るから、表には出してないんですけど。(笑)


鈴木
そうですよね。(笑)

そんなイメージありますよね。かなり高額なギャラのイメージ。


志磨
後日、「どうや、売れたか?」みたいな電話が来たりして。(笑)


鈴木
以外とちゃっかりしてそうですよね。(笑)

写真を見てどうでした?


志磨
そらもう、嬉しかったですよ!

だってミックに撮って貰ったんですもん。自分が写ってるとか関係ないですよね。


鈴木
いつか、いいタイミングでその写真を見ることはできないですかね?


志磨
…い、遺影とかにしましょうかね。(笑)


鈴木
それまで見れないんですか!(笑)

これはちょっと見たいんですけどね~。でも、いつか見れる事を楽しみにしてます!
で、改めてですが、東京で〈DAVID BOWIE by MICK ROCK〉を開催した時に、なぜ京都で開催しないんだという声が大きかったそうで。それというのも、デヴィッド・ボウイは親日家なのですが、その中でも得に京都を愛してたそうです。そこで今回、念願叶っての京都での一連の流れなんですけど。
志磨君も、京都は磔磔とかにも来られたりしてますけど、京都のイメージってどうですか?


志磨
まあ、海外の方からすると、こんな1000年以上もの歴史ある都市っていうのは、なかなか無いじゃないですか。自分達が歩いていても、異国情緒を感じたり。


鈴木
ほんまにね。ボウイも、めちゃくちゃ京都の町歩いてはったわけですもんね。


志磨
ボウイが阪急電車に乗ってる写真もありますもんね。

これはミックじゃなくて、鋤田正義さんという写真家の方が撮影されたんですが。


鈴木
古川町商店街の、“八幡巻き”っていうウナギでごぼうを巻いたやつが好きやったとかね。先ほど、その“八幡巻き”を差し入れで頂いて、デヴィッド・ボウイを味わったんですが。


志磨
やっぱり海外の人が、〈日本〉や〈京都〉っていうものに興味を持って愛する気持ちが分かるというか。

僕らが、〈ロンドン〉とか〈ニューヨーク〉に対して思うものってあるじゃないですか。
ああ、ここがビートルズの…!とかね。
ボウイからすると、日本でのそういうものが〈歌舞伎〉とかやったりしたわけで。
この人は本当に勉強家ですから。自分が興味持っているものの精神というのがこの地に宿ってるのか…とか思いながら、京都の町を歩いたんでしょうね。


鈴木
京都に住んでるんじゃないかって噂があったくらいですからね。

志磨君は、ボウイに会いたかったなあっていう気持ちはありますか?


志磨
…まあ、そらお会いできるなら、聞きたい事山ほどありますけど…。

まあ、そういう意味では綺麗事ですけど、音楽にして残してくれてるっていうのがあるから。
十分ボウイには色んな事を教わったし、救われたし、いまだにインスピレーションの根源だから…。

これはミックも言ってたんですけど、「何かの変なパロディみたいなんにだけはなりたくない」っていうね。だからあそこまでやり切るわけじゃないですか。ヨガにしても、ドラッグにしても、写真にしても。遊びまくって、写真はバシッと撮って、すぐにまた遊びに行くっていう。彼らには真似ようと思った型が無かったから。それが無いところで、何やってもいいんや!っていうところで、彼らが好きにやってきた事っていうのは、相当おかしな事なんですよ。当時、男がメイクして表に出るって、勇気もいることだったでしょうし。
「もうええやん別に、可愛いやん」みたいな。「マニキュア塗った爪、ええない?」みたいな。

ミックに、「あなたが撮った写真で、僕は自分のバンドのアイデアが浮かんだようなものなんです。デヴィッド・ボウイみたいな曲で、イギーポップみたいなパフォーマンスでやって。あなたが撮った写真が無かったら、僕はこうなってなかった。だからこうやって、あなたに会えるようなミュージシャンになれたのは…、変な言い方ですけど、あなたの写真を見て、僕はここまで、あなたに会いに来たようなもんなんですよ!」って伝えたら、ミックには「知らん」って言われましたけど。(笑)
でも、「よかったんちゃう?」って言われて。「多分、君は音楽をやってなくても、その身体を使って、それでお金を稼ぐ人になってたと僕は思うよ」って。すごいカメラマンらしい、フォトグラファーっぽい褒め方をして下さって。「だから、別に僕のおかげじゃないよ。でも、好きなものを見つけれて良かったね」って言ってくれて。多分、彼らはそうやって、色んな人に勇気とか、閃きとか、行動力とかを与え続けてきた。これからも与え続けていくんやろうなあって思って。それに、僕らは勝手に救われて、勝手にアイディアを盗んで。
でも、それだけやと、彼らがやってきた事をなぞるだけのパロディになってしまうから、まだ誰もして無いような事も考えてっていうね。


鈴木
しかし、「知らん」っていうの、何かいいですね。(笑)


志磨
なんか、そういう先輩っているじゃないですか。(笑)

こういうお仕事をしてても、中学の時めっちゃ好きやったんです~って方にお仕事とかでお会いしてね。
  後輩>めっちゃ緊張してます~
  先輩>何で緊張してんねん!
  後輩>めっちゃ好きなんです~
  先輩>え~!そんなん知るか!
みたいなね。ミックがもし日本人やったら、そういう感じなんかなって。


鈴木
でも、志磨君に対してもそういう風に言う若手が出て来てるじゃないですか。

「昔、聴いてました~」みたいな。


志磨
おお…、そうなんですよ。(笑)


鈴木
それ、志磨君は「知らん」って言えるタイプですか?


志磨
僕は、めっちゃ後ずさるタイプですよ。あの…エビみたいに。

「え~すみません、すみません。そんな…いやいやいや…!」みたいな。


鈴木
「知らん」とは言えない?


志磨
言えないですね~。言いたいけど。

「知らん」っていうような人に憧れますけど。言えない。
実際には、「え~ありがと~!ライン教えて~」みたいなね。(笑)


鈴木
(笑)

あと、さっき言ってたパロディやメイクの話についてなんですけど。
志磨君は、メイクとかビジュアルっていうものを、とても大切にされてる方やと思うんですが。ロックンロールやバンドをやる中で、自分自身へのメイクや衣装についてのコンセプトって、最初からあったものなんですか?それとも、やっていく中で出て来たアイディアなんですか?


志磨
まあ、やっぱりその時その時で、〈メイクする〉と〈メイクしない〉の二択やったとしたら、その時、より〈マイノリティ〉の方に行く感じなんですよ、僕は。

『SHOT!』の中でもミックが言ってますけど、「パンクはほんまに見た目が悪い」っていうのは、その前にボウイとかロキシーとかああいう着飾った人達がいたから。「じゃあ、俺らは考えられへんくらい、汚い恰好で出てやろう!」っていうのがパンクのアティチュードやし。じゃあ、ボウイ達がどうやったかというと、それまではもっとマッチョな世界なんですよ。エルヴィス・プレスリーとか。ビートルズはまたちょっと違ってて、すごいそこがまた面白いんですけど。ストーンズとかにしろ、髪長いとか、ちょっと中性的なものがありつつも、男のセクシャリティを全面に誇張して出すっていう形で、女の子達がキャーキャー言ってたんですよ。そこに、女性的な美しさというか、よりアートの様相を持ったボウイ達が出て来た。それまでは本当、いい意味で野蛮というか。クラシックとかジャズだとかの、頭のいい音楽なんて、親が聞いてるようなものやからって風潮で。「とりあえず俺たちは低能の限りを尽くそうぜ!」っていう音楽が格好良かったわけで。それに対して、「いやいや、もっと美しくやろうよ!」っていう感じ。アートやビジュアル的なものをどんどん取り入れていって、ボウイの山本寛斎さんの衣装とかもそうやし。そういう、「誰もやってないからやる」っていうもので、どんどん時代が作られていった。毛皮のマリーズを結成した時の僕はどうやったかっていうと、最初は誰もああいう事をやっていなかったので、非常にやりましたね。


鈴木
その感じが、今年リリースされた、ドレスコーズのアルバム『平凡』にも表れているというか。コンセプトが面白いなあと思って。よりシンプルになったというか。でもシンプルの中にある、『平凡』のビジュアルコンセプトって凄い格好いいし。

今、誰もやってない事やし。トレードマークやった髪の毛も切られてね。


志磨
うん。そういう行為は、やっていて面白いですね。

最初は外に向かって、「今世間がやってない事をやろう」っていう思いでやってたんですけど。齢を重ねると、その対象が自分になっていくんですよね。
ミックも言ってたんですけど、「以前の俺がやって無かったことをやろう」っていう。

僕ももう、その頃合いですよ。(笑)


鈴木
じゃあやっぱり志磨君にとって、凄くいいタイミングでミックに会えたんですね。


志磨
いやもう…、ほんっっっっとにそう思います!ホンマに。思し召しやと思いました。


鈴木
例えばこれが5年前とかやったら、また違ったでしょうしね。


志磨
まあ、それはそれでね、思ったんですよ。もっとミック的な文化にまみれてた時期っていうのもあったから。その時に会ってたら、また違う面白がり方をしてくれたんかもしれないけど。「お前どこから来てん…、俺の時代から来たん…?」みたいな。

でも、そうじゃない時に会えてよかったなぁ、とも思う。


鈴木
またいつか、ミックには会いたいですか?


志磨
とても思いますね。フランクな方でしたし。「俺の友達の遼平やで」って紹介してくれたりもしたし。
リップサービスやとしても、感動しましたし。またお会いできたら嬉しい。


鈴木
その時はちゃんと、スタジオとかでバキバキの写真撮影して欲しいなあとか思ってしまいますけど。


志磨
あの、『SHOT!』の中に出てくるスタジオ撮影の風景、面白かったですよね。
レニー・クラヴィッツがミックに「俺は誰?」って聞かれて、「ミック・ロック!」って答えさせられてるの。
言わせるのも、言うのも、どっちもどっちやし面白い。(笑)


鈴木
それ、志磨君にも言って欲しいけどな。「ミック・ロック!」って。

また“mother fxxker!”て言わされながら。(笑)


志磨
めちゃくちゃ恥ずかしいですけどね。思い出すと。(笑)


鈴木
まあ、権利の問題とか色々と難しいかと思いますが、いつかミックが撮影した志磨君の写真が、見れたら嬉しいなあって思ってます!その時のね、ミックの名前の表記がどれくらい大きいかっていうのも楽しみですけど。


志磨
そう、名前の大きさがね。(笑)

見たこともない大きさでしょうね。


鈴木
だいたい撮影者の名前って、普通は小さく書いてあるだけですもんね。


志磨
めっちゃ大きく「撮影:ミック・ロック」って書いてあると思います。(笑)


鈴木
是非やってほしい。(笑)

今日は、たくさんお話聞けて良かったです。


志磨
僕はもうね、手術受ける時はサングラスかけたまま受けようって決めました今日。

ミックを習って。サングラス外せへんわって。(笑)
今度ミックに会えたら、『SHOT!』の話もできたらいいなあ。
ミックに聞きたい事も、またいっぱいできましたしね。


鈴木
来てくれへんかな、ミックここに。(笑)


志磨
みなみ会館にね。(笑)

東京では、お客さんの姿もいっぱい撮ってましたよ。


鈴木
お客さんにも“mother fxxker!”って言わせてた?(笑)


志磨
お客さんには言わせて無かったけどね。(笑)

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ドレスコーズ/志磨 遼平(しま・りょうへい)
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毛皮のマリーズのボーカルとして2011年まで活動、翌2012年1月1日にドレスコーズ結成。
シングル「Trash」(映画「苦役列車」主題歌)でデビュー。12月に1stアルバム「the dresscodes」、2013年、2ndシングル「トートロジー」(フジテレビ系アニメ「トリコ」エンディング主題歌)、2ndアルバム「バンド・デシネ」を発表。2014年、2009年からテレビ情報誌「TV Bros.」で連載しているコラム「デッド・イン・ザ・ブックス」をまとめた単行本「少年ジャンク 志磨遼平コラム集2009-2014」発表。キングレコード(EVIL LINE RECORDS)へ移籍。1st E.P.「Hippies E.P.」をもって志磨遼平のソロプロジェクトとなる。現体制になって初のアルバム『1』、ドレスコーズ初のLIVE DVD「“Don’t Trust Ryohei Shima” TOUR 〈完全版〉」を発表。その後、LIVE・作品毎にメンバーが変わるという稀有な存在となり、多数のゲストプレイヤーを迎えて4thアルバム「オーディション」を発表。LIVE Blu-ray & DVD「SWEET HAPPENING 〜the dresscodes 2015 “Don’t Trust Ryohei Shima”JAPAN TOUR〜」を発表。
2016年に俳優業開始。WOWOW 連続ドラマW「グーグーだって猫である2 -good good the fortune cat-」、映画「溺れるナイフ」に出演。
フル3DCGアニメ映画「GANTZ:O」主題歌シングル「人間ビデオ」を発表。シングルには自身も俳優として参加した映画「溺れるナイフ」の主題歌である新録バージョンの「コミック・ジェネレイション」も収録。2017年3月1日、5th アルバム「平凡」を発表。

聞き手:鈴木 淳史(すずき・あつし)
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関西在住ライター・インタビュアー。ABCラジオ毎週火曜夜10時~深夜1時『よなよな~なにわ筋カルチャーBOYZ~』でパーソナリティー兼務構成作家を担当。
twitter:@suzudama14

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デヴィッド・ボウイ、クイーン、ルー・リード、イギー・ポップ、ブロンディ、シド・バレットら
ミュージック・アイコンを撮り続けている伝説のカメラマ
ン、ミック・ロック( M i c k R o c k )。
今回、彼自身が独自の視点でこれま
での活動を語るドキュメンタリー映画が日本上陸!

Photo courtesy of Magnolia Pictures. PHOTO © MICK ROCK 2017

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Photo courtesy of Magnolia Pictures. PHOTO © MICK ROCK 2017

伝説のカメラマンが自ら語る、ロックンロールの審美眼―

デヴィッド・ボウイをはじめ、イギー・ポップ、ルー・リード、クイーン、シド・バレットらのポートレートやアートワークなどを撮影し、「70年代を写した男」と称される伝説のカメラマン、ミック・ロック。インタビューや写真の撮影を通して活動をスタートさせた彼は、アーティストと共に70年代のイギリス音楽シーンを作り上げ、NYのパンク・ロック・シーンから現在に至るまで、時代を彩るミュージック・アイコンを今もなお撮り続けている。そんな彼が自らナレーターを務め、40年に及ぶ自身の活動を、当時の貴重な写真や映像を用いて描いた作品が、ドキュメンタリー映画『SHOT! THE PSYCHO-SPIRITUAL MANTRA OF ROCK』である。映画は、ミック・ロック独自の視点からすべてが語られ、本作で初めて公開されるデヴィッド・ボウイやシド・バレットの映像、ルー・リードのインタビュー音声など、彼自身が保管していた莫大な資料で作られたサイケデリックな作品に仕上がっている。映画のスコアは、ザ・フレーミング・リップスのスティーブン・ドローズが担当。全米での4月公開に続き、日本での公開が決定。京都で行われる写真展「DAVID BOWIE by MICK ROCK」開催に合わせ、ボウイの愛した京都で、日本初上映&先行プレミア・ロードショーを行います。

 

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